メディカルケアポストでは、これから在宅医療を立ち上げたいと考えている医師をサポートするために、この連載を企画した。その足がかりとして、2020年3月に、MCSユーザーのうち「在宅医療立ち上げ経験のある医師」「在宅医療の立ち上げに興味のある医師」を対象としたアンケートを実施。まずはその集計結果をベースに、在宅医療立ち上げにあたって実際にどんな困難があったのか、問題を解決するためにどうアプローチしたのか、といったことについて前・後編の2回に分けてレポートしたい。前編ではグラフとともに本アンケート結果の概要を示し、後編では回答してくれた医師のフリーコメントをもとに、よりリアルに現場の課題と解決策を伝えていく。
多くが40代で在宅医療をスタート
まずは今回のアンケート概要を簡単に紹介しておこう。「在宅医療立ち上げ経験のある医師」の回答者は50代(42%)、60代(31%)が最も多く、そのうちの約4割が在宅医療歴10年以上20年未満となっていた。ちなみに回答者の70代の医師では全員が在宅医療歴30年以上であり、多くが40代で在宅医療をスタートしていることがわかった。「在宅医療立ち上げに興味のある医師」の回答者のほとんどが40代の内科医であることからも、やはり医師になって10〜20年ぐらいで在宅医療に関心が高まる傾向があるようだ。
きっかけは臨床現場での経験
これから立ち上げようと考えている医師のほとんどが、在宅医療に関心を持ったきっかけについて「臨床現場での経験」と答えている。この点はすでに在宅医療に取り組んでいる医師にも共通しており、具体的には次のような経験が挙げられた。
このほか「地域に在宅医療を必要としている患者がいる」といった社会的ニーズや先代からの継承、学生時代の経験などがきっかけとなったというコメントが見られた。
立ち上げ時の“壁”は経験者への相談で解決
これから立ち上げようと考えている医師たちが、在宅医療立ち上げ時の課題として予想したのが「採用・スタッフ教育」「PR活動」「スタッフのマネジメント」といった項目だ。知りたいことを具体的に尋ねると「必要な人員の構成、教育に必要な資材など」「多職種の方々との連携方法や手段」などが挙げられた。少子高齢化による医療介護の人手不足や働き方改革など、最近の日本全体の課題がそのまま影響しているのかもしれない。
立ち上げ時の課題について、経験した医師たちの「立ち上げ時に大変だったこと」に対する回答を見ると、やはり多くを占めたのは「採用・スタッフ教育」、次いで同率で「経営分析」「管理業務全般」となっている。そして、こうした課題に対する解決策としては知人を含めた経験者への相談が最も多く、勉強会への参加や企業の提供するサービスなどはあまり活用されていない印象だ。
日々の苦労は?やりがいは? 在宅医療のリアル
在宅医療を立ち上げてからの実際の状況はどうだろうか。まず「在宅医になって苦労したこと」については「スタッフのマネジメント」「多施設・多職種との連携」が同率でトップとなり、立ち上げ時に苦労したバックオフィスの部分だけではなく、診療に関わる部分にも苦労していることが伺える。その解決方法として、立ち上げ時の課題解決同様に経験者や知人への相談という回答は多いが、ICT活用や勉強会への参加など、いろいろな方法を探っている様子も見て取れる。また「在宅医になってからのやりがい」については、患者・家族との距離が近くなり、より深く患者と関われるようになったことにやりがいを感じている医師が多いことがわかった。
こうした在宅医療立ち上げ時・立ち上げ後の課題や解決策、そして在宅医としてのやりがいなどについて、後編では回答者から寄せられたコメントを引用しつつ、より具体的に紹介するので、ぜひお読みいただきたい。
(後編へ続く)
文/金田亜喜子