コミュニケーションツールが支える医療介護者の連携

ICT活用によるケアマネ業務の効率化と地域連携促進(愛知・犬山市)前編

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ICT活用によるケアマネ業務の効率化と地域連携促進(愛知・犬山市)後編

▲ケアプランセンターともいきの村上貴宣氏(左)と同じケアマネ部会の運営委員としてMCSの推進に尽力する、いつき介護相談センター犬山のケアマネージャー・河野清進氏(右)

愛知県最北端に位置し、人口約7万4000人を擁する城下町・犬山市。高齢化率は2017年で全国平均より高い28.4%で、医療ニーズが高い要介護の高齢者の数も増えつつある。そんな中、多職種の情報共有やコミュニケーションを円滑に行うためのICTツールとして、犬山市を含む尾北医師会が管轄する4自治体(犬山市、江南市、大口町、扶桑町)でMCS(「びーよんネット」という名称で利用されている)を推奨。それを受けて犬山市介護サービス事業者協議会ケアマネージャー(以下ケアマネ)部会の運営委員を務める村上貴宣氏と河野清進氏が中心となり、業務の効率化と、利用者の生活の質や満足度向上に努めている。今回は、地域での多職種連携の取り組みについて、ケアマネ視点で話を聞いた。

■PROFILE

村上貴宣(ケアマネージャー・社会福祉士・介護福祉士)/犬山市介護サービス事業者協議会ケアマネージャー部会(ケアプランセンターともいき)大学の社会福祉学部を卒業後、人の役に立つことが実感できるケアマネの仕事を志し、現場経験を積んでケアマネの資格を取得。利用者や住宅型有料老人ホームの入居者にじっくり向き合い、心からの思いやりを持って接することを大切にしている。入居者の処遇向上や地域貢献活動にも取り組んだ。現在は主任介護支援専門員としてさまざまな相談に応じながら、より適した環境を提供できるよう尽力。MCSの活用も推進している。

ケアマネは医療介護連携の潤滑油

▲以前からICTがケアマネの仕事に役立つのではと考えていたと語る村上貴宣氏

 要介護の高齢者など患者が医療と介護の適切なケアを受け、満足のゆく生活を維持していくために欠かせないのが、病院やクリニック、薬局、訪問看護、ヘルパーやデイサービスなどの多職種と高齢者を繋ぐ要となるケアマネの存在だ。ケアマネが間に入りスムーズに連携するには、情報をリアルタイムで共有することが重要だが、携わる機関や関係者が増えてくると、情報共有だけでもかなりの手間と時間が必要になる。

 「とにかく書類仕事が多い」と語るのは村上氏だ。医療介護連携が進むにつれ、ケアマネの仕事量は増えてくる。利用者ごとに「支援経過記録」「居宅サービス計画書」をはじめとするさまざまな書式に必要事項を記入し、5年間保管しておかなければならない。「医療の必要度が高い利用者さんが多くなると、病院やクリニック、薬局、歯科医師、訪問看護とのやりとりが増えますし、リハビリやヘルパーさん、車椅子など福祉用具の専門の方とも連携が必要になります。もちろんご家族との連絡も」(村上氏)。電話やファクス、メールなどでやり取りするだけでなく、逐一きちんと書面にして残しておかなくてはならない。

 多職種のサービス担当者会議の設定もケアマネの仕事だ。担当者の数が増えれば増えるほど、日程調整の手間がかかる。「2018年度の改定では、これまでの入院時情報連携加算、退院退所加算、緊急時等居宅カンファレンス加算にターミナルケアマネジメント加算が加わりました」(村上氏)。自宅や居宅型施設での看取り件数はまだ少ないとのことだが、今後、ケアマネがターミナルケアに参加する事例も珍しいことではなくなるだろう。「書類仕事が多いことは、ケアマネなら誰でも感じていると思います。しかし書類は減らせない。きちんと決められた様式で保管しておかないと、プラン料が減算になったり、行政指導の可能性も出てきたりしますから。また、書類仕事だけでなく、関係機関との連携も密に取らなければなりません。こうした課題はICTで効率化できるのではないか、ということは以前から考えていました。そんな時に尾北医師会の勉強会でMCSを紹介されて、これはいい、と推進する立場になったわけです」(村上氏)。

ケアマネ部会で積極的に導入を推進

▲患者家族との情報共有にMCSを利用している河野清進氏。 利用者や家族に頼られるのは本当にありがたいことだという河野氏は、より多くの多職種に参加を促す活動を積極的に行なっている

 尾北医師会で導入が決まった時、情報共有ワーキンググループの運営委員をしていたのが河野清進氏だ。「犬山市の訪問診療のクリニックの先生が導入にとても積極的で、グループを作ったり参加を促したりしてくださったので、私たちも前向きに取り組もうということになりました」。

 そして、村上氏と河野氏は、所属する犬山市介護サービス事業者協議会のケアマネ部会で勉強会を開き、部会の連絡ツールにMCSを使うことでMCSへの参加を促し始める。「ケアマネ対象の耳寄り情報をMCSに掲載することで、参加のインセンティブを高める試みもしています。他市町で行われているケアマネの活動内容を知らせたり、勉強会の資料を議事録と一緒に載せたり、医療機関などやり取りするときの共通書式の置き場所にしたり。そもそもケアマネは横の繋がりが重要なんです。ネットワークが広がれば、いろいろな事例に対応しやすくなる。また情報交換として、法律の改正のことなどが、MCSでやり取りされています」(村上氏)。「ケアマネ部会以外でも登録者を増やそうと、福祉事業者連絡会でも勉強会を開いて利用のメリットを説明し、登録のヘルプやIDが届いた後のフォローもしています」(河野氏)。

 ケアマネ部会のメンバーの参加率は約7割ほどだという。不参加の理由は、ICTツールにメリットを感じていない点や、個人アドレスの付与ができない環境、などだ。「医師会が積極的に利用を勧めていることと、無料で利用できることが参加しやすい要因ですね。料金がかかるとなると、決済が必要なところも多いので」(村上氏)。

 まずはケアマネ同士の情報交換から使い始めたMCSだが、実際の現場ではどのように使われているのだろうか。「患者グループの誘いは、先ほどお話しした訪問診療のクリニックの先生から来ることが多いのですが、ケアマネ発信で患者グループを作ることもあります。私の場合は、ご家族がスマホを使っているなど、ICTツールに拒否反応がない方に対して導入を勧めています。実際に画面を見せて、こんな風に便利なんだということを体感してもらって」(村上氏)。「私は一人暮らしだとか日中独居だとか、家族が遠方にいるなどして患者さんとご家族の関わりが少ない人に参加していただくことが多いですね。訪問看護、ヘルパー、ケアマネ、医師などの多職種スタッフが、どのように患者さんと関わっているかが、遠くにいてもわかっていただけるので」(河野氏)。

効率面だけでなく患者家族や多職種との関係性にも変化が

 患者グループで利用を始めて2年経ったが、MCSを導入することで、書類仕事や多職種間でのやり取りの多さなど、ケアマネの多忙な業務にどのような変化があったのだろうか。村上氏、河野氏の実感を下記にまとめてみた。
●書類仕事の効率がよくなった
・支援経過記録や実績報告など所定の記録にテキストデータをコピー&ペーストして残せる
・電話でのやりとりがMCSになり、会話を新たに入力する必要がなくなった
・医療機関から来る紙のカルテやレポートが患者ごとにデータで届くので、仕分けしてファイリングする必要がなくなった
・地域包括支援センターにUSBで持参していた書類がMCSで送れるようになった(扶桑町のみ)
・業務に使用する共通フォーマットが共有できるようになった

▲ケアマネ部会で共有されている情報(一例)
▲USBで持参していたデータもMCSで送付できるように

●多職種連携がよりスムーズになった
・電話と違い医師の都合がよい時に返事がもらえるので、ちょっとしたことが気軽に聞けるようになった
・顔写真が見られるので、初めての連携先でも安心してデータが送付できる
・多数の連携先があっても、必要書類の送付漏れがなくなった
・ファクスで送付すると真っ黒になって読み取りづらい介護保険証も画像やPDFでクリアに見える
・ファクスが届いたか確認する必要がなくなった
・ファクスやメールだと挨拶文を付けたりして仰々しくなりがちだが、MCSだと気軽な感覚でやりとりできるので、文章を考える時間が減ってストレスが減った
・メッセージアプリで患者家族とやり取りをしていたときは、夜間や休日にも通知が入るので気になったが、MCSに切り替えたことでオンオフの切り替えがしやすくなり、心理的な負担が減った

▲医師への質問が気軽にできるようになった

●患者・家族の安心感に繋がった
・医師の診断結果、デイサービスでの様子、今後のサービス内容などが、離れて暮らしている家族とも共有できる
・介護に参加したくても距離的に難しい家族に、特に喜ばれた。医師や多職種のやりとりがリアルタイムでわかるので安心感が大きい
・同居する患者の家族が老齢の場合、家族から遠方の子供に正確に状況を伝えることが難しく、どういう状況なのかなかなか把握してもらうことが難しいこともあったが、MCS上で多職種のやりとりを確認してもらうことで、「しっかり見ていただいていて、本当に安心できる」と感謝された

(後編につづく)

取材・文/清水真保、撮影/岩田多佳晋

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