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在宅医療スタートアップ企画(12)インタビュー編 守上佳樹氏 「“医師以外”の自分でチャレンジ」

第2回 24時間365日体制を独自のシステムで実現

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▲訪問診療先の守上佳樹氏

父のクリニックを継がず、西京区での開業を決めた守上佳樹氏(よしき往診クリニック院長)へのインタビュー。第2回は開業にあたっての心配をどう克服したかを紹介する。

独自のメディカルコーディネーター制を導入

 気がかりだったのは、在宅療養支援診療所に必須の24時間365日体制をどう構築するかでした。そこが心配で二の足を踏んでいる医師も多いと思います。僕の場合は、物心ついた頃から父を見ていたので、なんとかなるという気持ちはありました。父の診療所には在宅医療が注目されるはるか昔から、「いつでも呼んでくれ」というかのように、待合室に父の携帯番号が書かれています。夜中の3時とかに呼ばれていたこともよくありました。大変だなあとは思っていましたけれど、そんな父を見ていたので自分もまあ大丈夫じゃないかなと。
 今、患者さんは月280人くらいです。だいたい毎月15~20人の新患があって、10人くらいがお亡くなりになります。月280人という数は在宅医療専門クリニックとしてはそれほど大した数字ではないのですが、居宅率でいうと97%。施設はほとんどないんです。皆さん、驚かれますよ。日本一に近い数字じゃないかな、多分ですけど。
 当院では僕が独自で考えたメディカルコーディネーター(以下MC)制を導入しています。MCとは担当医と別の医師、外部のスタッフを繋ぐコーディネーターのことで、医師が診療に専念できるよう、医師しかできない業務以外、例えば電子カルテやメディカルケアステーション(MCS)の入力、運転などを担当し、患者さんに関する情報共有も行っています。

仕事に集中できるチーム制は最強

 患者さんの人数が増えてきたので、今は1日5チーム体制くらいで動いています。車4~5台で街を回っていますから、同時に医師も5~6人、MC5人が必要になる。またクリニックで電話を受けるメンバーも必要です。現場のメンバーが電話応対すると、本来してほしい仕事ではないところに注意が削がれてしまいますから。
 医師と、医師をサポートするMCがチームで動き、全員がそれぞれの仕事に集中できるこのシステムは最強だと思います。これがあるから24時間365日体制ができるんです。開業するまでいろいろな病院で勤務しましたが、客観的に見ても、今のチームが患者さんにとっても、医師やスタッフにとっても一番いいと確信しています。離職する人も少ないし、みんな楽しそうに仕事してくれていますからね。
 このやり方を取り入れたという話も聞きますが、人材が集まらなかったり、スタッフの意思疎通や協力がうまくいかなかったり、僕と同じようにできるとはかぎらないようです。おごり高ぶっているわけではなくて、僕のスタイルは本当に「みんなでやって行こう!」なんです。サッカー部のキャプテン経験があるからかもしれません。「絶対みんなで優勝するぞ!」って、メンバーや周りの人を巻き込んで、同じ方向を見て。そういうタイプのリーダーのチームであれば僕のやり方は合うかもしれません。

ある程度の集約と強力な連携が地域医療の鍵に

 実際に在宅で終末期を診るのはかなり大変です。迅速に動かなければならないし、時にはその場で判断を求められることもあります。自宅には施設のように看護師が24時間常駐したり、ヘルパーが周りにいるとは限りませんし、立派な設備や連携の病院があるわけもない。すぐに動いてどんな疾患にも対応するだけでなく、家族対応も必要です。全くゼロのところに介入するので、看護師、理学療法士、言語聴覚士、作業療法士や管理栄養士、ケアマネジャーとの連携の輪を、リーダーとして作らないといけない。既存の輪がある場合もそこにスムーズに入るまで時間がかかる。だからそれぞれの専門職がプロ意識を持って連携していかないと、パワー不足になってしまう。結局医師は確認したりするだけになり、ほとんどの業務を看護師が担当するようなことにもなりがちです。それを批判するつもりは全くないのですが、それより往診専門のチームを集約して、外来のクリニックと病院を連結させていくほうがいい。それは地域医療の一つの解になると思ったんですね。「ある程度の集約と強力な連帯」。これがそもそも少ない上に分散している地域医療のリソースの活用の仕方の一つだと思ってやっていますし、それが理念にも現れているのではないでしょうか。

▲信頼できる多職種連携のイメージ図
▲守上佳樹氏が顧問を務める「all西京栄養を考える会」では、事業所の垣根を越えて管理栄養士同士の連携を築いている

取材・文/清水真保

(第3回に続く)

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