コミュニケーションツールが支える医療介護者の連携

在宅医療スタートアップ企画(14)インタビュー編 守上佳樹氏 「“医師以外”の自分でチャレンジ」

第4回 病診連携も会って話すことから

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▲守上佳樹氏(よしき往診クリニック・院長)

西京区で在宅医療の新しい形を作った守上佳樹氏(よしき往診クリニック院長)へのインタビュー。最終回は病診連携について、そしてこれから開業を考えている医師たちへのアドバイスをお届けする。

強力な病診連携は必須の時代

 僕がこういう性格なので、病院との様々な連携も向こうから話がくることが多いです。西京区には病院は多いので、患者さんの搬送先には苦労しないのですが、患者の搬送先としての病院、退院先としての地域の診療所、といったそれだけの病診連携だけではなく、地域中の病院の中のメンバー皆が、在宅医療であればあのクリニックと連携したい!と思ってくれるような気概が必要と感じています。
 僕たちのチームでは、現在西京区の全ての病院群と何らかの関係性を持ち、全ての病院の間を縦横無尽に駆け抜けることができるようなイメージを持っています。
 機能強化連携型在宅医療支援診療所なのでグループの連携先の病院とはもともと繋がっています。一つの病院は、私の出身病院なので、勤務医時代の病院の医師は全員知っています。近隣の大病院のからは、年間10人弱くらい研修医の受け入れをしているので、これも大きなパイプです。
 また、あるグループ病院の病院長から突然呼び出されて、総合内科医として土曜日に外来をやってくれないか、と言われたこともあり、これもご縁かなと思って引き受けました。診療所の院長をしながら、病院の外来にも出向しているわけです。実質的に地域内の人材交流です。グループ病院全部に、仲間であるという感覚をもってもらいやすくなります。
 結局、気がついたら地域のほとんどの病院と強力な連帯ができていて、その間を僕らは自由に泳いで回っている。こちらがしっかり仕事をしていたら、病診連携って病院側も強烈なメリットになるのだと思います。退院後の受け入れ先を探すのは大変なので。
 反対に地域医療側からの本格的な病院の医師や職員へのコミットがまだまだ不足していると感じます。

実際に会って話すことが全てのスタートに

 もし病院との連携に苦労している場合はまずは病院の医師や地域連携室のメンバーに直接会ったり、今ならオンラインなどで話してみれば、立場は違っても気持ちで繋がるものはあるはずです。
 コミュニケーションを取るのも難しい相手なら、多分何をしても難しいので、医師だけでなく地域連携室としっかり仲良くなればいいと思います。「病院の先生が一番偉い」という、昔ながらの価値観のままの医師もいるかもしれませんが、会って面白い話ができれば、距離が縮まると僕は思っています。
 それも難しい場合は、病院主催の勉強会に参加するのもいいと思います。通常、病院は地域に対してそういう場を設けてくれているので、出席したら名刺を持っていき、その場で話してくる。単に勉強会で話を聞いて終わりではなく、そこで関係を作ることが地域連携だと思います。「うちはこういうことを全力でやっています」と話ができれば印象に残るし「勉強会に来てくれた先生だ」と覚えてくれる。そうやって、まずは自分から飛び込むのが大事だと考えています。

変わりつつある在宅医療を取り巻く環境

 開業当時、京都で在宅医療を手がけているところは本当に少なかったのですが、この3年間でかなり増えました。ある意味、僕たちが若手で最初に取り組んだので、すごく新鮮に映ったと思うのですが、最近は京都でも大阪でも、若い医師たちの開業が珍しくなくなっています。
 そこまで状況が変わったのは、在宅医療自体がメディアなどに取り上げられたことで、やりがいのある分野だということが浸透してきたからだと思います。在宅医療を始めた若手の医師が世の中で認められ、脚光を浴びていることも理由なのでしょうか。別の見方をすると、通常の医局人事、病院の中でのピラミッド型の年功序列にあまり魅力を感じなくなっている医師も多いのかもしれません。

「医師免許以外の自分」を大切に

 これから在宅医療を始めようと思っている若手の医師にアドバイスをするとしたら、「医師免許以外の自分」を大事にしてほしいということかな。「医者なのだから」という自分の枠、壁をどうしても作ってしまいがちになるので。とにかく職業とか、役職とか、性別とかを1度外してみる。医師免許以外の自分で勝負するということですね。
 人生は1度しかない。去年の自分に胸を張ってこの1年頑張った、成長したと言える自分でなければ。皆さん、子供の頃の夢ってありますよね。パン屋さんになりたいとか、宇宙飛行士やアイドルになりたいとか。それってたかだか30年とか40年前のことなんです。だんだん年を取ると、休みたいとか、給料が増えてほしいとか、教授になりたいとか、昔の自分の夢からすると本当にちっぽけなことに縛られているのに、すごく違和感があって。だから僕は、昔の自分に胸を張って、ちゃんと目を見てまっすぐ、もし目の前に昔の子供の時の自分が突然出てきたとしても、僕は、私は、頑張ってやっているよ!と言えるような生き方をしてほしいです。
 現実的なアドバイスじゃなくて申し訳ないですが、僕はこんなこともよく思うんです。ビジネスにおいても、戦略や経営論だけでなく、絶対、感情論も入れたほうがいいと思うんですよ。熱い気持ちを持ってやらないと、どんなに最先端のやり方でも、頭のいい人がたくさんいても、表面上のことだけになってしまう。強い気持ちや熱い気持ちを持ってやること自体に、強い価値があるということをちゃんと発信したほうがいいと考えています。

▲よしき往診クリニック外観

取材・文/清水真保

(了)

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