コミュニケーションツールが支える医療介護者の連携

ICTで業務改革 ― エスケアメイト DXへの挑戦

この記事のポイント

・エスケアメイトは医薬品卸スズケンのグループとして介護事業を展開
・エスケアステーション流山では積極的にICTを取り入れ業務効率化を模索
・スタッフ全員に業務用スマホを貸与し業務改革へ
・短縮できた業務時間をお客さまと向き合う時間に充て、更なる満足度向上を実現

▲エスケアステーション流山 デイサービスとショートステイを一体的に提供

エスケアメイト:在宅ケアから居住ケアまで、一人ひとりのニーズに対応

 株式会社エスケアメイトは医薬品卸スズケンのグループ会社で、在宅系サービスを中心に23拠点51事業所を首都圏・中部圏で展開する介護事業者である。 お客さまの要介護度や身体状況、ニーズに合わせ、在宅でのサービスを希望される方から居住系サービスの利用を考えられる方まで対応出来るよう、幅広い介護サービスを提供している。

 特に目を引くのが、ICTを積極的に導入するエスケアステーション流山だ。ここでは、デイサービス(定員30名)とショートステイ(定員20名)が一体的に提供されている。デイサービスは星野和也さん、ショートステイは水野淳美さんがそれぞれの管理者として指揮を執っている。
スタッフ構成も多彩で生活相談員、看護師兼機能訓練指導員、介護職員、送迎職員、事務員、栄養士などで、デイサービス14名、ショートステイ16名が在籍している。

▲左から水野淳美さん、星野和也さん、田中レノリーレイエスさん

業務効率化に向けてMCSのトライアルを開始

 MCSは3年前に本社経営層からの勧めがあり、一部の職員へ試験的に導入したのが始まりだった。
「それまでスタッフのシフト交代時の申し送りに口頭や連絡ノートを使って多くの時間を費やしていました。」MCSにお客さまの基本情報(趣味、好きな食べ物、担当ケアマネ、既往歴、服用薬等)を登録し、患者タイムラインに申し送り情報をアップする運用を始めると申し送りでの時間短縮等、導入効果が見えてきた。
「勤務前に毎日MCSでその日にいらっしゃるお客さまのチェックをしています。例えば看護師さんから切り傷の怪我があるので注意するようにという指示があれば、その情報を頼りに接することが出来ますし、基本情報を基にお客さまとのコミュニケーションを深めています。」(水野氏)

▲ショートステイを管理する水野氏

スタッフ全員に業務用スマートフォン「コラボモバイル」を貸与

 「試運用でスタッフ全員がMCSを使わなければ意味がない事を感じ取りました。お客さま全員の情報をMCSに登録し、スタッフにも全員業務用スマートフォンを貸与することを決断しました。MCSへの最初の登録作業は非常に大変でしたが、今考えると業務効率化に繋がったメリットの方が遥かに大きいと感じています。」
業務用スマホの導入に関しては、コストの問題もあったが個人のスマホで利用者の個人情報を扱うことのセキュリティ上の理由が大きかった。その時、丁度タイミングよく『コラボモバイル(※下図参照)』サービスの紹介を受けたことも導入の決め手になったという。

▲MCSアプリが最初からバンドルされた医療介護専用スマホレンタルサービス「コラボモバイル

 「会社から携帯を持たされるって、監視されているみたいだ」と導入当初は職員から戸惑いの声が上がったが、導入後の状況は一変。
夜勤1人体制は、お客さまの症状急変や転倒、暴力暴言など発生した際の対応が労務環境に大きな負担となっていた。今は1人1台貸与で不安や判断に迷うときは管理者へ連絡することができる為、安心して業務ができるようになった。
この数年のコロナ感染流行時には、お客さまや職員の感染状況などを出勤してから知るのではなく、MCSへ即周知することで不安なく業務を担うことができるようになり、各自出勤前にMCSの更新情報をチェックする習慣も身についた。
また、スマホをどのように業務に活かせるか創意工夫を図り、業務改善提案が出てくるようになった等、スタッフの意識も徐々に変わったそうだ。

改善提案により業務改革

 「コラボモバイルが特に役立つのは、お客さまが持参する私物の管理です。」ショートステイでは、お客さまが入所時に持参した荷物を一つ一つ確認し、荷物チェック表に記載していた。お帰りの際の荷物確認や万一紛失した際のトラブル防止がその理由だ。
その作業には多くの時間と労力がかかっていたが、各自がスマホで撮った持参物の写真データをダイレクトに複合機へ転送、プリントアウトされる運用にしたことで、作業時間が大幅に削減、職員もそのストレスから開放された。あるスタッフからの提案が業務改善に繋がった事例の一つである。

▲ショートステイ入所時、紛失防止のため所持品を写真で記録

業務を効率化して個別対応に時間を割く

 エスケアメイトのデイサービスではお客さま一人ひとりに合わせた個別機能訓練を提供していている。集団訓練とは異なり、その分スタッフの手間は余計に掛かるが、利用者の身体機能改善や、高い満足度が確認されている。
個別プログラムを提供するのに必要な情報はMCSで利用者別に登録されているので、新人職員でもベテランと格差なくサービスを提供できる体制が整っている。
また、ご家族にもMCSに登録頂き、写真や動画を交えて利用者の様子を報告するサービスのトライアルも始めた。ある時は、ご家族さまにレクリエーションの様子を動画で報告すると「こんな笑顔、家では見たことが無い」と感激されたこともあったという。
「お客さまやご家族さまから頂く感謝の言葉が職員のモチベーションアップや離職率低減に繋がっていると考えています。」(星野氏)

▲デイサービス管理者の星野氏

コラボモバイルとMCSで解消されるコミュニケーションの壁

「私はフィリピン出身で、日本には26年住んでいます。日本語での会話は問題ありませんが、文章になると漢字があるので読んで理解するのが困難でした。でも今ではコラボモバイルのお陰で大丈夫。」そう語るのは田中レノリーレイエスさん。MCSをGoogle Chromeの翻訳機能を使って英語に変換することで、確実な情報共有が可能になり、もうこれは手放せないと笑顔で話す。

▲Google Chromeの翻訳機能で日本語から英語に変換する手順を示す田中氏

さらに、救急対応や送迎サービスでの急な予定変更時にはコラボモバイルでの電話連絡とMCSの利用者登録情報の参照によりスムーズな対応が実現している。

「以前はドライバー確認用に送迎車内に紙ベースのお客さま情報一覧を乗せる運用をしていましたが、随分怖いことをしていましたね。業務専用スマホとMCS、セットの運用で個人情報を安心安全に管理・共有できるようになりました。」(星野氏)
急ぎの要件はスマホでの通話やSMS、急ぎではない要件はMCS、という使い分けもスタッフの中で自然と定着し、看護師やドライバーからの評判も上々のようだ。

地域ケアマネさんとの連携強化へ

 「ケアマネさんから電話で、どんな食事の量でしたか?とか、どんな具合でしたか?というように問い合わせを頂くことが多いのですが、電話を受ける事務所職員は実際にお客さまのケアを見ていないので、申し送りで把握した情報や、自分が取得した情報の中から伝えるしかなく、受電した人によって受け答えに温度差があったりしました。そこはMCSで情報共有することによって解決しました。」

 星野氏と水野氏は、「今後は施設内だけでの運用ではなく、地域のケアマネさんにもMCSを使えば写真や動画でお客さまの情報を共有できるし、お互いに楽になることを伝えていきたい。」「今後MCSを地域に普及させ、医療・介護職の業務効率化だけでなくお客さまのQOL向上にも寄与していきたい。」と意気込んでいる。

コロナ禍で厳しくなった介護現場ではあるが、エスケアメイトはICTの活用で新たな道を模索している。その挑戦が業界全体のスタンダードとなる日も近いかもしれない。

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